Hard　To　Say

本当に嬉しかった。
金曜の夜、帰らないで居てくれたから。

初めて会ったときと同じ、スーツ姿。
スーツ姿に見とれてたら、
自分がちゃんとつりあってるか不安になって。

「なつき、ちゃんとOLっぽく見えるよ」
「そうかな？」
「大人っぽい。そういうの好き」
嬉しい。銀座だから、頑張った。

Jの知り合いのお店でイタリアンを食べる。
店長が面白くって何度かあたしたちの席に
ちょっかいだしに来た。
嬉しくない？そういうの・・・
だって、あたしたちの関係は、祝福されたり、
歓迎されたりはしない。
だけど、こうやって、Jがお友達に紹介して
くれたり、
ちょっとだけ、救われた気がしたの。

おなかいっぱいになって、かつワインによってしまったのに、まだまだ飲み足りなくて
タクシーで青山のワインバーに移動。
だいぶ酔った。
そのあとは、ホテル。
自然に。

いっぱいした。
いっぱい話した。
だから聞いた。
夫婦の事情には立ち入りたくなかったけど、
聞いてしまった。
「なんで子供作らないの？子供、好きだって
言ってたのに」
「出来ないんだ」

ヤヴァイこと聞いちゃったなって思った。
それ以上は何も聞かなかった。

だけど、不謹慎だけど、J夫婦に子供が
いないのは嬉しい。
子供が居たら更に罪悪感を抱いてしまうし、
それに、あたし、もっと怖いことを
思ってしまった。
書かないけど・・・

幸せだった。
ほんとに。誰にも邪魔されない空間。
ここでのJは全部、あたしのJだって。
勘違いかもしれないけど、
頭悪いかもしれないけど、
そう思ったの。

朝、チェックアウトして、渋谷の駅で別れた。
幸せなほど、この瞬間は寂しい。
振り返らなかった。
我慢した。

Jを大切にしたいと思えば思うほど、
我慢することは多い。
でも我慢できないことも増えてく。

次はいつ会えるかわからないけど。

早く会いたい。